この記事では2021年凱旋門賞の注目馬を紹介していきます。
今年の凱旋門賞は大混戦の様相
今回の凱旋門賞には各国の有力馬が出走予定です。そこで各馬のキャリアを紹介し、凱旋門賞を楽しんでいただければと思います。紹介順はオッズ順ではなく筆者の主観に基づきますのでご注意ください。
スノーフォール
スノーフォールは父にディープインパクトを持つ日本生まれの3歳牝馬で、日本ではとても人気があります。
スノーフォールは英オークスでの圧勝で知名度を世界的なものとしました。続く愛オークスも圧勝します。英愛のオークスを制覇した馬には有名どころで凱旋門賞連覇のエネイブル、エリザベス女王杯で衝撃の末脚を披露したスノーフェアリー、ディープインパクトと対戦しているウィジャボードなどです。しかしこれらの名馬と比べてもスノーフォールの圧勝劇は勝るとも劣りませんでした。ヨークシャーオークスにおいても前年の勝者ラヴを抑えて制覇し、古馬相手にも通用することが証明されました。
しかし凱旋門賞と同じロンシャン競馬場2400mで行われる牝馬G1ヴェルメイユ賞において、他レースで見せた末脚を発揮することなく同じく3歳のティオーナに負けてしまいます。ティオーナとスノーフォールはヴェルメイユ賞以前2度戦っており、英オークスでの圧勝劇にも参加しており2度とも勝っていました。敗因はレース中の位置が悪かったことのようです。
連勝ストップのスノーフォールですが3歳牝馬なので斤量は参加馬のなかで最も軽く、ディープボンドら4歳以上牡馬とは4.5kgもの差があります。この斤量差に衝撃の末脚を発揮できれば日本生産馬初の凱旋門賞制覇も現実味を帯びてくるでしょう。
アダイヤー
アダイヤーは今年の英ダービーとキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスを制覇した3歳牡馬です。父はフランケルです。
昨年の2戦目の未勝利戦を圧勝し、今年に入り2着を2連続、そして英ダービーを制覇します。英ダービーではハリケーンレーン(後述)に勝利しています。
勢いそのままに キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスに参戦し、他の有力馬を抑えて勝利します。キングジョージに出馬していたのは、ドバイシーマクラシックにて日本の現役最強馬クロノジェネシスやラヴズオンリーユーを抑え優勝したミシュリフ、欧州最強級牝馬ラヴ、キーファーズが共同馬主をしていることで知られるG1馬ブルームなど豪華なメンバーです。
3歳の軽い斤量やこれらの戦績が評価され、凱旋門賞優勝候補の一角を担っています。
ハリケーンレーン
上で触れたようにハリケーンレーンはフランケルを父に持つ3歳牡馬です。
英ダービーまではG2含め3戦3勝、英ダービーではアダイヤーの2着に敗れてしまいます。
続く愛ダービーに出走したハリケーンレーンは、先頭から7番手あたりで最終コーナーを迎えます。そこから600m続く直線で力強く長い末脚でジワジワと先頭へ詰め、クビ差でレースを制します。
その2週後、凱旋門賞と同じ舞台であるロンシャン競馬場2400mで行われたパリ大賞では2番手を先行し、また素晴らしい末脚で先頭に立ち6馬身差で勝利します。
今月9月11日に行われた2900mの英セントレジャーでは中団を追走して、またも武器である末脚で制しスタミナも兼ね備えていることを証明しました。
ハリケーンレーンはこのように欧州3歳戦線で戦ってきた馬ですので古馬相手にどれほどの競馬ができるかが楽しみです。持ち前の末脚とスタミナでぜひ凱旋門賞を勝ってアダイヤーにリベンジを果たしてほしいです。栗毛の美しい馬体なので筆者お気に入りの一頭です。
タルナワ
次に紹介するのは5歳の牝馬タルナワです。父はシャマーダルです。日本馬ですとライトオンキューの父として知られています。
2019年の3歳シーズンまではG3やG2を勝つものの、G1では惨敗してしまう実力でした。
2020年の4歳シーズンはコロナウイルスの流行で年の前半を全休、8月に昨年制したG3のレースで10か月ぶりの復帰を連覇で飾ります。この勝利からヴェルメイユ賞、オペラ賞年の4歳シーズンはコロナウイルスの流行で年の前半を全休、8月に昨年制したG3のレースで10か月ぶりの復帰を連覇で飾ります。この勝利からヴェルメイユ賞、オペラ賞(2000m3歳上牝馬)を制します。
次に選んだレースが世界最高峰のレースであるブリーダーズカップターフ(2400m)です。なんとこのレースも連勝の勢いそのままに制し、現役世界最強馬の一頭に名を連ねてシーズンを終えます。
そして今年の2021年5歳シーズンも初戦は8月となりG3のレースを勝利でスタートします。9月11日の愛チャンピオンステークス(2000m)に出走しましたが怪物セントマークスバシリカ(後述)に及ばず2着となりました。
この馬は上記の馬のように派手な勝ち方をする馬ではありませんが、粘り強い末脚や古馬戦線での素晴らしい実績を評価されブックメーカーでは1番人気に推されています。
クロノジェネシス
続いて紹介するのは我らがクロノジェネシスです。父バゴは凱旋門賞を制しており、引退後日本に渡ってきました。遠くへ海を渡った馬の子が再び海を渡り父と同じ舞台へ立つ、とても胸が熱くなりますね。
青毛に見えるほど濃い黒の芦毛と、コントラストの額の白斑が特徴です。
5歳牝馬なのでタルナワと同期です。国内だとグランアレグリアやラヴズオンリーユーとクラシック戦線を争いました。牝馬の時代を象徴するようなメンバーですね。
秋華賞でG1を初制覇、エリザベス女王杯に出走しますがラッキーライラック(1つ上のアーモンドアイ世代)に敗れます。
2020年も大阪杯でラッキーライラックに敗れますが、アーモンドアイが不出走となった宝塚記念を勝利しラッキーライラックにもリベンジを果たします。天皇賞秋では死闘の末アーモンドアイ、フィエールマンに及ばず3着となるも有馬記念でフィエールマンにもリベンジ成功で優勝、前年のリスグラシューに続いて牝馬2頭目の春秋グランプリ制覇を成し遂げます。
2021年初戦は前述のようにドバイシーマクラシックでミシュリフに敗れ2着となりました。コントレイルの回避が決定していた宝塚記念では、ユニコーンライオン(騎手坂井瑠星)の巧みな逃げに他馬が歯が立たないなか、一頭だけ次元の違う末脚でここを制します。
今回の面子は強すぎる等悲など悲観的な意見も見られますが、日本馬の凱旋門賞制覇は全競馬ファンの夢ですので期待したいですね。
ラヴ
4歳牝馬のラヴは父にガリレオを持ちます。ガリレオはフランケルの父でもあります。
2歳からG1に勝利し、3歳では英1000ギニー(1600m)、英オークス、ヨークシャーオークス、4歳ではプリンスオブウェールズステークス(2000m)と英国G1を連覇します。
これらレースは順番に日本での阪神JF、桜花賞、オークス、エリザベス女王杯(ヨークシャーの方が200m長い)、大阪杯とするとイメージしやすいと思います。つまり日本競馬的に見れば日本牝馬三冠以上の経歴を持っていると言えるでしょう。
続くキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスは前述の通りアダイヤー、ミシュリフに次ぐ3着、英インターナショナルステークスも1着のミシュリフに大きく離され3着、9月18日のG2レース(2050m)でも600mの直線に入ったときは先頭でしたが本来ならば格下馬にかわされ2着と3戦とも振るわない結果に終わっています。
2歳G1を勝っている馬ですので、もしかしたら旬を過ぎている可能性もありますが実績があるだけに注目しておきたい一頭です。
ぜひ知っておきたい馬
ここまでは凱旋門賞で優勝争いをするであろう馬を紹介してきました。ここからは実績こそ上記の馬に劣りますが可能性のある馬を紹介していきます。
ディープボンド
こちらも日本馬のディープボンドは4歳牡馬で父はキズナです。キズナの父は言わずと知れたディープインパクト。キズナ産駒は日本の重賞戦線で活躍していますがG1馬がまだ出ていません。もし初G1制覇がディープインパクト、キズナともに届かなかった凱旋門賞だとしたら、嬉しくて涙する競馬ファンは少なくないでしょう。
3歳クラシックはコントレイルやサリオスにまったく歯が立ちませんでした。しかし4歳の今年、阪神大賞典を圧勝。続く天皇賞春は1番人気に支持され前述のとおりキズナ産駒初のG1制覇なるかと思われましたが、ワールドプレミアに交わされ2着となりました。
凱旋門賞をめざしフランスに遠征したディープボンドは前哨戦であるフォワ賞(G2)を勝利します。
凱旋門賞と同じコースで勝利した経験は必ず本番でも生きることでしょう。
コントレイル世代を背負ってぜひ頑張ってほしいですね。
アレンカー
アドラーフラグ(Adlerflug)というドイツのG1馬を父に持つ3歳牡馬です。系統的にはサドラーズウェルズ系に属しています。アレンカーの母母にウィンドインハーヘアとありますが、ディープインパクトの母として知られる馬とは同名というだけで関係ありません。
実績は2400mのG2勝利が最高で、他にはパリ大賞でハリケーンレーンに敗れ3着、英インターナショナルステークスでミシュリフに敗れるもラヴに先着し2着などがあります。
ラービアー
4歳牝馬。父は凱旋門賞を制しているシーザスターズ。
実績は今年8月に2500mのG2勝利や2020年ヴェルメイユ賞でタルナワに敗れ2着など。
注目してほしいのは2020年の凱旋門賞に出走しており、あのエネイブルに先着して5着という点。またG1含むすべてのレースにおいて6着以下がないという点にも気をつけたいですね。
ブルーム
5歳牡馬。父はオーストラリア、オーストラリアの母がウィジャボードです。
キーファーズが共同馬主をしているけれど、ぱっとしない馬だなと思っていましたが今年7月にサンクルー大賞(2400m)にてG1制覇。このレースには昨年凱旋門賞2着のインスウープも出ていました。(筆者はインスウープの名前が好きです。)
キングジョージでは5頭中4着でしたが、フォワ賞ではディープボンドに次いで2着です。
凱旋門賞では武豊騎手が騎乗予定ですので日本馬並に応援したい一頭です。ただ59.5kgの斤量はなかなか厳しそうです。
トルカータータッソ
今記事を執筆するまで存在すら知りませんでした。ドイツの4歳牡馬で父はアドラーフラッグ(Adlerflug)です。アレンカーと同じですね。ドイツの名種牡馬なのでしょうか。
2020年G1ベルリン大賞(2400m)、2021年9月5日G1バーデン大賞(2400m)を稍重で勝っています。圧勝ではありませんでした。
ドイツ競馬はまったく分かりませんがレーティングだとディープボンドの1つ上、スノーフォールの1つ下の119に位置しているので無視できません。
以上で注目馬の紹介でした。出走馬すべてを解説したわけではないので注意してください。
凱旋門賞には出走しない有力馬
セントマークスバシリカ
3歳牡馬。2000mG1で強さを見せていましたが、けがにより引退しました。
ミシュリフ
4歳牡馬。実は2020年サンバサウジダービーカップにて武豊騎乗のフルフラットに負けていました。
その後は仏ダービー、ドバイシーマクラシック、英インターナショナルステークスを制覇し2021年10月1日時点でレーティング世界最強馬の一頭です
ティオーナ
3歳牝馬。スノーフォールにヴェルメイユ賞で勝った馬。今後に注目。